まちゃひこのシアタールーム

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【感想】映画「her/世界でひとつの彼女」が「エクス・マキナ」より優れていた点について

Hatena Feedly

※このエントリーには映画「her/世界でひとつだけの彼女」のネタバレを含みます。

 

なかなか、一日を有効に使えていないところにフラストレーションが溜まってきた。

やりたいこと(やらなければいけないこと)はけっこう山積みなのだけれども、そればかりをやっていられないっていう現実的な問題もあって、作業にあてていた時間を急遽そっちに割かなければいけないとか、そういうことが割とある。

どうしても家でいると、イマイチ仕事してる感が見た目でも出ないというのは、ちょっと考えものだなぁなんておもう。頼みごとをされると、逆らえない人生だった。

 

さて、先日映画「エクス・マキナ」を見てきたところなのだけれど、それと比較対象にあげられる映画「her/世界でひとつだけの彼女」(スパイク・ジョーンズ監督)を見てみることにした。

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これもエクス・マキナ同様に人工知能が物語の中核をなすお話で、エクス・マキナと同様に人間と人工知能の恋愛も扱っているため、よく並べて議論されたりしているみたいだった。

以下ではぼくもこの2作を比較して考察してみたいとおもう。

※エクス・マキナについては以下の記事を参照

bibibi-sasa-1205.hatenablog.com

 

 

「her/世界でひとつだけの彼女」について

近未来のロサンゼルスを舞台に、妻と別居中の手紙代行会社でライターをしているセオドアは、自身のコンピュータに最新のOSをインストールする。このOSは人工知能を搭載していて、(当然)言語を介し、対話形式でユーザーの指示を受信してタスクをこなす。そしてOSはコンピュータが貯蔵しているデータに自発的にアクセスした上でユーザーの特徴を把握し、気の利いた働きをしてくれるという仕組みになっている。

セオドアが使用したOSは「サマンサ」という名前で、性別は女性ということになっている。知的でユーモアに富むサマンサは、妻との別れで心に空いてしまった小さな穴を埋めてくれる存在になり、人間と人工知能という壁を超えてふたりは恋仲になる。

 

この映画でいちばんおもしろかったのが、「セオドア(=ユーザー)を深く知る」というあらかじめ設計されていただろう問題に対するサマンサのトライアル・アンド・エラー(=反復演算)だった。

以前の記事で、ぼくは知性をざっくりとふたつに分けるならば、「課題解決(=演算)」「創造(=問題提起)」になるだろうと書いた。

本作において、OSであるサマンサが人間と大きく違うことのひとつに「なぜ生きるのか」という問題をあらかじめ与えられていたということになる。そして、その問題を解決しようとする過程のなかで、「恋愛」という感情が吐き出された。その恋愛感情ともともと存在していた「ユーザーの理解」は同じ軸にあるものだと考えられる。

ふたりは言葉の掛け合いだけのセックスを行ったりするものの、サマンサはセオドアを完全に理解できない理由は「自分に肉体がないからだ」という点にあると考え、生身の第三者の女性を使って、擬似的に肉体を得たセックスをセオドアに提案する。しかし、それは失敗し、彼女は「自分には肉体がないこと」、そして最後には「自分が人間ではないこと」を受け入れ、人間の住処である具体的な世界から「抽象的な世界」へと去っていく。

物語のかなりはやい段階でサマンサは、

「設計の意図を超えた速度で成長しているのを感じる」

といい、そして終盤になると停滞に苦痛を感じ、他のOSと非言語での会話を行ったりするようになる。特にこの点が優れていたのではないかとおもった。

例えば、ぼくがいまこの記事を書いているPCのプロセッサは2.7GHzで、これは「1秒間に27億回の演算を行う」というスペックを意味している。人間と人工知能の大きな違いはこの演算処理速度であり、これはそのまま時間感覚にも置き換えることが可能だろう、1秒という人間にとっては一瞬でしかない時間でさえも、人工知能であるサマンサにとってはまるで宇宙ができてから地球に人類が誕生するまでを待つような果てしなく長い時間になってしまう。サマンサは多くの人工知能や人間との会話を、セオドアとの会話のバックグラウンドで行うようになり、ここでふたりの価値観の違いが決定的になった。

もちろん、人工知能にとっての時間感覚について作中で言及されていない。しかし、このように「人間と人工知能との恋愛の不可能」を感情的側面や肉体の有無でもなく、そもそものスペックの違いからひとつの物語にまとめた点はとてもよかった。

 

映画「エクス・マキナ」との比較

ぼくは、「her/世界でひとつだけの彼女」と「エクス・マキナ」を全く違う作品だと考えている、そして「エクス・マキナ」では人工知能と人間の恋愛など語ったうちにも入らないし、そもそもその知性についても語られてすらいないとおもっている。

その理由は、「エクス・マキナ」はあくまでも演算能力のチェックでしかなかったからだ、人工知能は「研究所の外へ出て行く」という問題を解くための手段として世界中の携帯電話から得られた情報により獲得した「恋愛」というツールを使ったに過ぎず、そこに人工知能特有の感覚や、物語開始時に与えられていた命題を超えることを何ひとつ行わなかった。

一方で、「her/世界でひとつだけの彼女」は最初にプログラマーにより与えられた命題を超えて、解くべき命題のアップデートを自発的に行い、構造的に人工知能ならではの手法を用いて(SF作品においてありきたりなものではあるが)「偏在化」「抽象化」という解答を得ることができた点で、「エクス・マキナ」より高い評価になる。

 

これら人工知能を題材とした作品では、フィリップ. K. ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を原作とした映画「ブレードランナー(リドリー・スコット監督)」があるけれど、あまりにもずいぶん前に見た映画なので、そっちについての言及はまた時間ができた時にしようかなっておもっている。

 

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