まちゃひこのシアタールーム

ブログ「カプリスのかたちをしたアラベスク」の別館。映画の話をするよ!

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〝フランス人は照れ屋なの〟〜アラン・レネ「風にそよぐ草」

Hatena Feedly

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恩師と呼べる人は3人いるのですが、そのうちのひとりはぼくのクラシックギターの先生です。
 

先生に習っていた時、あんたフランス人のこと全然わかってない!という指摘を受けたことがあります。当時はフランス人と話したこともないし、フランスに行ったこともないので当然である。

そのとき見てもらっていたのがちょうどフランスの近代音楽で、それは先生の一番の得意分野だという。フランスの留学経験も豊富な先生がいうに、
「フランス人は照れ屋」
らしいのだ。そしてそれはかれらの作る曲にきちんとあらわれる、といい、先生は譜面上の臨時記号を指差した。
「フランス人は、かっこいいことをかっこいいままシュッと終わらせられない。かっこいいことをしているとどこか気恥ずかしくなって、最後にちょっと外した感じでおちゃらける。そこにもっと気を配りなさい」
そういう指導を受けたのだけど、あいにくなんの曲のレッスン(≠ラッスンゴレライ)かは忘れてしまった。
 
 
しかしそれはもちろん音楽に限ったことじゃない。フランスの映画を見ていると、やっぱりそういう傾向はなんとなく感じる。ゴダールにしろ、ジャン=ピエール・ジュネにしろ、オゾンにしろ、そしてアラン・レネにしろ、そういう要素はある。このフランス人のユーモアっていうのは、ちょっと冗長でうんざりすることもあるけど、わりとたのしい。

 

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(以下、風にそよぐ草のネタバレを多少含みます)

風にそよぐ草

もうすぐ遺作となる映画「愛して飲んで歌って」が公開されるってのもあり、さっき、アラン・レネの「風にそよぐ草」を見ました。コメディタッチのラブストーリーで、第二次世界大戦を背景とした初期作品である「夜と霧」「24時間の情事」とはずいぶん雰囲気がちがって驚きました。
この作品、そんなんせんやろー!なんでやねーん!みたいな言動が結構あるのですが、それが作品のもつユーモアによって違和感でなく滑稽さとして映り、見ていてとてもたのしいです。映像の技術云々はわからないのですが、主人公のおっさんがあれこれ考えるときの吹き出しとか、なんか間の抜けたナレーションとか、そういうもの細々としたものが作品に和やかな雰囲気を作ることに成功している。
 
でもこの作品の見所は断然後半の展開です。
 
男→女というアプローチの方向が女→男へ逆転すると、その和やかな雰囲気がすっと消える。しかし滑稽さはどことなく消えないのですが、構図の変化とともに滑稽さが不気味さへと姿を変える。
その変化というのが、まさにこの映画のラストシーンが象徴しているように感じました。このように最後の瞬間が作品全体の構成と一致しているところを見る限り、かなり周到に練られたプロットだなあと感心するだけでなく、自身のユーモアを客観視し、それを自在に使ってみせる余裕に舌を巻きました。もう照れてる場合じゃないですね。気味の悪さが尾を引きました。
 
公開予定の作品もラブコメディだと聞いています。アラン・レネの最後の作品を3月に楽しみたいなあとおもう日曜日なのでした。
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